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COTOPICS コトピックス

vol.152020年7月号

きょうの架け橋

対談:書家 川尾朋子×当社代表取締役 川口聡太(2/3)

女の人の生き方、世界ではどう思ってる?
「HITOMOJI Project」

川口「『人文字』シリーズでは、ご自身が文字の一部となっていますが」
川尾「これもみんなにどうみられるのかなって、勇気がいりました。きっと賛否あるでしょうけれど、私は今しかない自分を表現したかったんです。だから一番初めは『生(いきる)』という字を発表しました。私が涅槃の格好-お釈迦様が入滅されたときの姿-をして一画になっていて、私たちは死と隣りあわせで生きているんだということを伝えたかったんです」
川口「なるほど、今のお話をふまえて他のものももう一度見直してみたくなりました。では、他の人を文字に入れてアップされている『HITOMOJI Project』はどのようなきっかけで始められたのですか?最近 instagram でたくさんアップされていますよね」
川尾「あれは、世界中の女性にインタビューして、その人を表す漢字一字を見つけて創っています。世界の女性の『今』を感じてもらいたいなって」
川口「おもしろい取り組みですね!自分だけではなく他の人に、と目を向けたきっかけは何かあったのですか?」
川尾「うーん、日本の女性って立ち位置がすごく大変だなって思ったことでしょうか。私自身、結婚して周囲から言われることが変わったのがきっかけです。『そんなに仕事していて大丈夫なの?』とか、『仕事続けるの?』って、逆に男性だったら絶対言われないじゃないですか。じゃあほかの国の人は、どう考えているのか肌で感じて知りたいと思ったんです。しかもそれを漢字にして発表している人なんて、他にいないでしょう?やってみたいなって」
川口「とても興味深いです!インタビューする人はどうやって見つけているのですか?」
川尾「初めに行ったフランスでは、まず 1 ヶ月リサーチの時間をとりました。『今のフランス』を体現する方を探してお声がけしたのが、LGBT の方や、同性婚の方。南アフリカは、アパルトヘイトで黒人住居と定められたタウンシップという地域に住む人に絶対会おうと決めていました。他にも 2019 年中に、日本、オランダ、デンマーク、スイス、イスラエル、2020年は年明けに韓国に行ってきました。」
川口「日本の女性はどんな文字になりましたか?」
川尾「選択の『選』です。『毎日が選択の連続です』言葉がすごく印象的だったんです。まず結婚したらキャリアと子どもを産む時期の選択を迫られた。子どもが生まれたら目まぐるしい毎日の中で、今、どっちの用事を優先する?って選び続けているって。『一人目は私が産んだから、二人目は夫が産むって選べるようになったらいいのに』とも言っていました。仕事と母親を両立している日本の女性のリアルですよね。ちなみに学歴社会で、まだ序列などにも厳しい韓国の女性は『悩』。こうして今、生きている人のリアルな生活を追いかけたいんです」
川口「今ふと思ったのですが、リアルな生活だとみなさん似た文字になったりしませんか?」
川尾「意外とならないんです。例えばオランダで『将来パイロットになりたい!』と話してくれた女の子は、『改』としました。日本でパイロットって、まだ男性の職業のように思いませんか?」
川口「確かに、そうですね」
川尾「でも彼女の視野に入っているということは、オランダの感覚では男女差がない、またはなくなったということだろうと思いました。さらに『今は温暖化に興味があって、地球環境の改善に向けて運動したい』とも話すんです。日常的にもうそんなことまで考えてるんだ!って、毎回予想を裏切られています」
川口「確かに国によって全く違いますね。当社でも女性にはどんどん活躍してほしいと思っているのですが、日本では女性管理職はまだまだ少ない。その要因の一つとして、我々経営者はもちろんですが、女性の意識も変わらなくてはいけない部分もある気がするのです」
川尾「今働いている世代は、過渡期ではないでしょうか。『女性はこうあるべき』という世代に育てられているので刷り込みもあって、踏み出せない部分もあるかもしれないですね。あと 30 年もすればずいぶん変わっていると思いますが。私は、何がいいとか悪いとか、こうするべきだとか決めていくのは大変だし、みんなが上手に共存するにはどうしたらいいか?を考えたいなって思います。そもそも男女で分けて議論をするのも違うっていう時代ですしね。そのために私にできることは、作品を世の中に出すこと。2020 年中にあと 10 か国くらい行って、インタビュー映像と作品を並べた展覧会をして、本にもまとめたいと思っています」
川口「すごく楽しみです!開催されたらぜひ伺いますね」
川尾「ぜひぜひ!」

日常の「今」が発想の原点
自分の「今」を届けるIT

川口「しかしものすごい行動力です。年に何回も、違う国へ行かれていて」
川尾「それこそインターネットのおかげですよ。昔なら何か国も廻るなんてきっとできなかった。今は飛行機のチケットや宿の手配、コーディネーターさんや現地の情報も部屋の中で手配できるから実現できたこと。スカイプで通訳さんに入っていただいたこともあるんですよ」
川口「なるほど、動画の通信がスムーズになるとよりコミュニケーションの取り方にも幅が出ますよね。川尾さんのライブパフォーマンスも、瞬時に発信できますし」

「家で遊ぼう」
STAYHOME期間中にInstagramで発信。
他にも「宀」の中に「食」「話」「楽」など、
家で今できることを新しい漢字として創作。

川尾「TEDxKyoto 2013(※)に出演したとき、それは感じましたね。書いている、その瞬間に世界に見てもらえるっていいなって」
川口「インターネットやデジタル機器は、その普及によって人の手で書くことが減り、書道とは対極にあるものかもしれません。ですが書道を世界に広めるお手伝いができるのもネットやデジタルだと思うのです」
川尾「HITOMOJI Project は特にフォトショップや動画などデジタルの力を借りて創っているものですから、私はそんなに遠いものと感じることはありません。ただ、IT 技術の普及は横書きがより日本人に浸透したひとつのきっかけではあるかも。最近、大学で講義をした際に『白紙に講義名を書いてみて』って言ったらほとんどの子が横書きするんですよ」
川口「川尾さんの、書道の講義でですか?」
川尾「そうなんです。日本語って縦書きが美しく見えるように成立しているのに、もったいないなって。それで縦書きの美を感じてほしくて、英字の縦書きを思いついたんです」
川口「日々の鍛錬から発想した「呼応」も「HITOMOJI Project」も、すべて川尾さんが日常で感じたことが作品の原点なんですね」
川尾「はい。常に自分が今書けるものを作品にしたいと思っているからでしょうか。最近はスマホのスクロール画面で何かできないかなって考えているんです」
川口「スマホ?!」
川尾「だって、書もスマホも基本はタテに見ていくでしょう?」
川口「なるほど!インターネット業界のものとしても、何ができるのかとても興味深いです」

TEDxKyoto 2013…TED はアメリカの非営利団体。「良いアイデアを広めよう」をモットーに世界各地で講演会を開催し、その様子を動画配信している。2013 年、京都で開催されたカンファレンスに川尾氏はスピーカーとして参加、またライブパフォーマンスの披露と作品を展示。

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