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COTOPICS コトピックス

vol.142019年9月号

きょうの架け橋

対談:株式会社大西常商店 四代若女将 大西里枝×当社代表取締役 川口聡太(3/3)

扇子の技ひとすじに
後継者としての力をもっとつけたい

川口「今日まで息つく間もなく駆け抜けてこられたと思いますが、今後はどのようなビジョンを持たれていますか」
大西「扇子はもともと、毎日使う生活必需品でした。今はギフトやお土産としての価値が高まっていますが、やっぱり人の暮らしに寄り添うものを作りたいという願いはあります。『かざ』は今のライフスタイルでお使いいただくものとして、いいものができたんじゃないかなと思っています」
川口「では、今後も新商品に取り組んでいかれる?」
大西「そうですね、でも扇子から外れることはしたくないんです。ご先祖様がやってきたように扇子一本でやっていきたいし、品のよいものを世に送り出していきたいですね」
川口「伝統工芸を守るひとりとして、素晴らしい信念だと思います」
大西「ただ、扇子の技術を使った別の商品を作るのはありだと思っています。初代の大西常次郎も、元々は髪を結う『もっとい』を扱う商いをしていたそうなんです」
川口「そうなんですか、初めから扇子ではなかったんですね」
大西「日本髪文化がなくなってゆく中で、和紙という同じ原料を使い、和装店という同じお取引先に商えるものを探して扇子にたどり着いたのだとか。時代に合わせて技術の使い道を広げていく発想の転換はありだなって」
川口「『かざ』がまさにそうですよね」
大西「はい、職人さんが持つ技術に特化していくような方向がいいなと思っています。ただ直近で言うと、もっと自社の足元固めをしていきたいです」
川口「それは社内システムの整備、といったことですか?」

大西「はい。例えば今、卸売やOEMのご注文は全てお電話とFAXでお受けしているんですね。これをECサイトから注文いただけるようにできないかなと思っています。理想を言えば、ECサイトと在庫管理システムを連動させられたら最高です。在庫を確認したり、商品を探したりするのにものすごく時間がかかるので。IT技術を使って効率アップを図れば、営業活動や店舗での小売など、今までできなかったことにも力を入れられます」
川口「システムの部分は私どもが得意とするところ。ぜひお力にならせてください(笑)」
大西「ぜひ!お願いします!」
川口「『もっとやれる』から始まっただけあって、八面六臂の大活躍ですね」
大西「そんなことないです、まだまだです。この2~3年、『もっとうちを知ってもらおう!』と広報や新商品といった外向きのお仕事に邁進してきました。一方で扇子のこと、会社のこと、経営のこと、知らないことばかりだなと痛感することも多くて、もっと勉強したいって思うんです。だからここで一度立ち止まって、内側にしっかり目を向けなければと感じたのだと思います。今は社長として父がどっしりと構え、昔からの仕事をきちんと続けているからこそ『跡取りのやんちゃ娘さんが暴れてはるな』と見守っていただけていますけど、この先そればかりではダメですから(笑)。京都では老舗の後継者の方がユニークな挑戦をして成功されている方も多いですよね。好きにやらせてもらえる今のうちに色んなチャレンジをして、その方々に続きたいです」

語る言葉やしぐさの端々にフレッシュなエネルギーがほとばしる姿は、さながら真夏の太陽のよう。斜陽産業と言われる業界に飛び込んで、まだたったの3年。これからどのように周りを燦燦と照らしてゆくのか、きっと多くの人がこれから到来する彼女の季節を楽しみにしている。

取材・文 鈴木 茉耶
撮影 橋本 生美

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