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COTOPICS コトピックス

vol.132018年7月号

きょうの架け橋

対談:植治(小川治兵衞)次期12代・御庭植治株式会社代表取締役 小川勝章 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)

覚悟をくれた人の縁

川口「家業を継ぐことについては、子どもの頃から決めておられたのですか?」
小川「この間小学校の文集を見たら、警察官かケーキ屋さん、もしくは家業を継ぐって書いてありましたよ(笑)子どもらしい憧れも多少はあったのでしょうが、当時から当然継ぐのだろうという意識は持っていました」
川口「ではお庭のお仕事はいつから本格的に?」
小川「子どもの頃から先代たちが造った庭は遊び場で、高校生の時から庭掃除として見習いもしてきました。でも本当の意味で腹をくくったのは最近のこと。ここ数年ですね」
川口「そうなんですか!?」
小川「先ほども言ったように、自分が継いでいくのだという自覚はもちろんありました。ですが一緒にやってくれているスタッフや先祖からのご縁も含め、関わらせて頂くお庭すべての責任を清濁合わせのんで背負う覚悟をしたのはここ最近ではないかと思います」
川口「覚悟を決めるきっかけが何かあったのですか?」
小川「きっかけというよりは、自分のまわりに繋がっている人の縁のありがたさや大きさをひしひしと感じることが多くなったことですね。家族や周りのスタッフ、仕事関係者の方、地域の方、京都の方…その中には先代たちが庭とともに築き上げた信頼もあります。自分が得ているものの大きさを実感したとき、庭も信頼もしっかり守っていかなければならない、支えてくれているスタッフの良さが伝わるような仕事がしたいと思ったのです」
川口「そうですか。伝わっていると思います、人を大切にされているお気持ちは」
小川「まだまだです。川口さんも経営者として、会社の方々に対して背負われているものがあるでしょう?」
川口「私は至らないところもあるでしょうし、若い頃は従業員との接し方についても試行錯誤の日々でした。ですが我々IT業界において、人は財産です。ですから若い人がやりたいことをのびのびとできる環境をつくるのが役目ではないかとは考えています」
小川「財産。そうですよね。うちのスタッフは十年以上一緒に働いてくれている人が本当に多いんです。彼らの居場所をつくるためにも、私ももっと頑張らなくてはと思います」

込められた想いを読みとき、次へ繋ぐと庭はふくよかに

川口「本を書かれたり、お庭見学ツアーの解説を務められたり、精力的に活動されておられますよね。特に伝えたいことはどんなことですか?」
小川「一点から見るのではなく、多点的にみるとお庭はもっと面白いというところでしょうか。例えば、石ってメッセンジャーなんですよ」
川口「メッセンジャー?」
小川「はい。石の置き方を見ると、そのお庭の正面が分かるんです。すると、そのお家の主人がどこに座っていたかが読み解けるんです」
川口「そうか、一番きれいに見える場所が上座ですね」
小川「そうです。『立ったままではなく座ってみたり、自分がこの家の主になったつもりで庭を見て下さい』というのは私がいつもお伝えすることです。そしてその上座に座ってお庭を眺めると、一番目に付く場所にその人にとって一番大切なものがあったりするんです」
川口「へえ!」
小川「石を辿ることで、お庭に込められた物語が見えてくる。こんな庭の見方もあるんだと伝えたい気持ちは強いです」
川口「私のような素人にとって、物語を知るきっかけを与えてくださるのはありがたいです」
小川「ありがとうございます」
川口「しかしそこまで緻密に作られたお庭ですと、修景や維持にもとても頭を使いますね」
小川「そうですね。先代は何を思い、どんな意図で石や木々を配置したのか。理解しても、元通りにするだけでは先人の思いを受継ぐことにはなりません。時代に合うものをどのように取り入れれば庭は輝くのか…庭づくりは常に先代たちとの共同作業だと感じています。先人の想いを汲み取り、過去と現在、そして未来をうまく繋げば庭はどんどんふくよかになっていく。作って終わりではない、時代を渡る庭づくりを目指しています」
川口「ひとつのお庭にも、それだけの心が詰まっているなんて今まで知りませんでした。庭の感じ方を多くの人に教えていっていただきたいです」

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