COTOPICS コトピックス
vol.72014年9月号
対談:山田松香木店 山田洋平 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)
香と生活を身近にした「Kioka」
電子香炉「Kioka」
川口「先ほどから香炉を焚いて頂いていますが、新たなチャレンジとして電子香炉も開発されていますよね。こちらを開発されたきっかけは何だったのでしょう?」
山田「うちでは聞香体験教室をよくやらせてもらっているんですが、ご参加いただいた方はやはりお家でもやってみたいと思っていただける方が多いんです。せっかく興味を持っていただいた方に、現代の技術で昔ながらの文化を楽しんでいただけるように、との想いを込めて創りました。それがKioka(※2)です」
川口「昔ながらの香炉は、手間がかかるんですか?」
山田「そうなんです。炭を熾してまんべんなく火を行き渡らせて、灰の中に埋め込んで、形を整えて。だから、初心者の方に道具をおすすめしても二の足を踏んでしまわれます。始めるには敷居が高い、手間がかかるし難しい、手先もそんなに器用じゃない、そんな方が簡単に楽しんでいただけるようにというのがスタート地点です」
昔ながらの香炉。
香を焚くには繊細な作業が必要
川口「評判はいかがですか?」
山田「おかげさまで各メディアさんにも取り上げていただいたりして、かなりの反響はいただきました。ワンタッチで香を焚けるので、初心者の方だけでなく熟練者の方もこれは楽だ!ってお求め頂けていますね。香り人口の底上げに貢献できたんじゃないかという手応えは感じています」
川口「これは専務ご自身がお考えになって開発されたんですか?」
山田「ええ、私が中心になって…産学連携プロジェクトとして、京都工芸繊維大学さんとコラボレーションしてできたものなんです。デザイン系研究室のお力をお借りして、実際の香炉の特徴を生かしつつ洗練されたプロダクトデザインに仕上げていただきました。香炉の足は三本と決まっているところを流線型の足で表現したりとか。こうして形ひとつとっても、昔ながらの香のコアな部分は必ず残していきたいと思っています。それが私たちの責任ですから」
川口「なるほど。いかに現代の生活に入り込み、かつ大事なところを守っていくかが伝統産業のジレンマであり、挑戦の部分でもあるんですね」
山田「そうです。ですがまず香のことを知っていただかなくては、ライフスタイルの中に取り入れるという発想すらしてもらえませんので、Kiokaは日本の香りに馴染みのない、若い方に使っていただきたいですね。アロマはブームになって、定着しつつあるでしょう。同じように西洋のものでなく日本古来の香りを、お家でリラックスしたい時やお仕事されている時に取り入れていただきたいです。そんな時にKiokaを使って気軽に楽しんでいただければと思っています」
(※2)Kioka…2013年11月に発売された、ポータブル式の電子香炉。