COTOPICS コトピックス
vol.22013年9月号
対談:伊と忠/スーベニール 伊藤忠弘 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)
歴史を伝えて守るもの
川口「立ち上げてからずっと、一つの会社でやってきた伊と忠とスーベニールを、昨年分社化してるよね。それはどうして?」
伊藤「伊と忠はもう成熟した産業だし、和装市場がこの先どうなろうと代々続いて行かなくてはいけないもの。お客様にご支持頂いている伊と忠ブランドを極めるための取り組みや、若い世代への技能継承が事業の中心となります。事業拡大を無理に狙うと、変えなくていいものまで変わってしまいます。一方スーベニールはどんどん新しいことにチャレンジしていくのが使命です。スーベニールで取り扱う商品はあくまでも和装とは別物。スーベニールの事業で和装産業を盛り立てようとか、和の装いのあり方を変えて新たな提案をしようとか、そんなことは考えていないんです。だけど、和装とはどのようなものかって世の中の認識は僕らが思っているほどはっきりしていない。だから、自分たちのほうから「違うものを作っているんだ」って示したほうがいいのかなって。あと10年もするとスーベニールブランドのほうが世の中への波及力は大きいだろうし、知名度も上がると思うんです。その時に伊と忠が薄れてはいけないと思いました。だから、スーベニールを独立させたのは伊と忠が老舗であることを守るためでもあるかもしれません」
川口「伊と忠が老舗として守っていかなくてはいけないものって何だろう?」
伊藤「歴史の積み重ねと重みというか・・・例えば技術。履物って、もともと台座と鼻緒が別々なんですよ。靴みたいに決まったサイズで出来上がってるものではなくて、鼻緒のすげ加減で履きやすさが決まるんです。その鼻緒をすげる職人の技術は履物の肝なんです。一見穴に紐を通すだけの簡単な作業に見えるんですがめっちゃ時間かかるんですよ、一足すげるのに。熟練の職人でも5分10分でできるものじゃなくて、30分くらいかかるんです。そのすげ方もそれぞれの履物屋さんで違うとこがあって、うちは中でもゆるまないように手が込んでるんです。」
川口「オーダーメイドに近い感じだね」
伊藤「そうですね。足のサイズだけじゃなく甲の高さとかも考えてすげるので。どんな足だったらこの部分は何センチ、というわけではなく職人の肌感覚、指感覚ですげるので結構熟練の技なんですよ。こういった所はもう変えられないし、変える必要性もない。ここの工程は省いてもいいんじゃないとか、変えようとか口出ししようと思ったら出てくるんですけど、そんなんはもうやる必要もないですから」
川口「職人さんはちゃんと次の代とか育ってるんですか?」
伊藤「そうですね、高齢化していきがちですが若い世代を育てるのはやっていかなあかんと思ってます。職人の技とか、手に職持ちたいって若い子もこんな時代ですけどいるんですよ」
川口「今後どんな人に和装に興味持ってほしいとかあるんですか?」
伊藤「そりゃできるだけ多くの人に興味持って欲しいですけど・・・長い目で考えると、今の30~40代の着物人口を増やさないと、お商売として続いていきませんしね」
川口「新たな層を獲得しようと、呉服業界の方はいろいろやってはるけれど」
伊藤「呉服に興味を持つ人は、本当は狙った新しさには価値を見出さないと思うんです。昔から続くものに共感するはずなんで、ほんの少し伝え方を変えればいいんだと思うんですが、それが難しい」
川口「ブログでの情報発信もその一つなんだね」
伊藤「そうですが、まだ弱いです。和装とインターネットって、意外と深く結びついているはずなんですよ。30~40代の若い世代で和装好きな人って趣味性が高くて、ネットでの情報収集や交流にものすごく親しんでおられる人が多いと思うんです。それから、今は年配の方もかなりインターネットを使われるじゃないですか。データで見ると、所得の高い年配の方はインターネット利用率が高いらしいんです。うちの購買層と完全にマッチしていますし、もっと深く踏み込んで力を入れなければならない分野だと思っています」
スーベニール株式会社 http://kyoto-souvenir.co.jp/
※こちらのWebサイトは、当社にてリニューアルのお手伝いをさせて頂きました。
リニューアルの詳しい情報はこちらをご覧下さい。
京都そだちの社長のブログ http://kyoto-itochu.jugem.jp/
※対談の中にも登場した、伊藤社長のブログです。