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COTOPICS コトピックス

vol.162021年11月号

きょうの架け橋

楽焼 長樂窯次期4代 作陶家 小川裕嗣×当社代表取締役 川口聡太(2/3)

目線は高く、耳は素直に

藍釉(あいぐすり)黒楽茶盌

川口「では卒業後はお父様のご指導のもとで作陶を始められたのですか?」
小川「京都市産業技術研究所で釉薬の勉強をしたあとはそうですが、ほとんど見様見真似ですね。手本を渡されて『見て作れ』の繰り返しでした。若い頃はもう少し体系的に学びたい…と思ったこともありますが、過度な指導は身につかず、意志ある反復が自身の作品に厚みをもたらすのだと、しだいに体感するようになりました」
川口「少し分かります。社員も自分で考えて行動できるようになってほしいと思いますし」
小川「そうですね。今では自由にやらせてもらえて良かったなと思っています。ただ、『常に目線を高く持っておけ』というのはずっと父から言われていました。人間、今できることの少し上しか見ることはできない。次に到達したときにまた違う景色・課題が見えてくる。だから、今の自分より常に少し高い場所を見続けることで、技術的にも人としても成長できるのだと。実際、ステップアップできたと思った瞬間に未熟さを感じることも多いですから」
川口「では、成長の手ごたえを感じるのはどういった時でしょう。自己評価なのか、他者評価なのか」
小川「今、黒楽に藍色が滲み出るオリジナルの『藍釉(あいぐすり)』や、窯中で炭の灰が自然にかぶる『焼貫』をより高温で焼成する手法を試しているのですが、思った以上のものが焼けると手ごたえを感じます。本当に稀なことではありますが(笑)」
川口「お茶室に飾られていたものがそうだとおっしゃっていましたね」
小川「そうです!加えて鑑賞者からの評価、特にやきものは分からないんだよ…とおっしゃる方の率直な感想も大切にしています。自分は門外漢だという人に『いいな』と思ってもらえるということは、技術の難しさやめずらしさといった理屈を飛び越えて心に届いているということ。その方の価値観を震わせたり、やきもの文化や歴史とつながる入り口となれることに喜びを感じます」
川口「ああ、よかった。私も素人ですが、素直にお伝えしていきたいと思います」

楽焼の殻を破っていく
コラボレーションに夢中

川口「他領域とのコラボレーションにも積極的ですね」
小川「コラボレーションは、僕のライフワークですね。まだまだ、やりたいことが尽きません」
川口「最初のコラボレーションは、当広報誌の創刊号にお招きした未生流笹岡家元の笹岡さんとご一緒だったと伺っています」
小川「そうです。能『杜若』をテーマにお茶・お花、そしてやきもののインスタレーションをやってみたいとお家元に熱弁しましたら、面白いと乗って下さり実現しました。今までにも能・茶道・華道が一同に会するイベントはあったのですが、それぞれが独立した構成になっていたんです。けれどせっかくご一緒できるのにもったいない。そこで『杜若』に登場する在原業平の霊(※1)にお茶とお花を捧げる、三方が同時進行する物語仕立ての舞台をプロデュースしました」
川口「その舞台で使われた茶盌と花器は、もちろん小川さんの作品ですよね」
小川「はい。ただ、お家元から『屋外のイベントだから、空間の大きさに負けないよう大型の花器が必要です』とリクエストを受けたんです。どれくらい必要か伺ったら、幅70cmくらいは必要だろうと。楽焼の窯は小さくて、まだ大きいほうの赤楽窯でも35cmくらいまでの作品しか入らないんですよ。そこで父と一から窯を築きました」
川口「窯を作った?!」

インスタレーション@両足院
photo by 桑島薫

小川「はい。しかも楽焼は、高温状態から一気に冷ますのが肝ですから、火の中から一気に出せる窯でないといけない。そこで引っ張り出すのではなく、窯を分解できるように作り、横長の赤楽窯、また引出しの大壷を焼ける黒楽窯を完成させました」
川口「窯のほうを可動式に?逆転の発想ですね!」
小川「これをきっかけに、技術革新が起きたんです。コラボレーションの醍醐味はここですね。視野が広がって一気に殻を破るきっかけになる」
川口「数年前にはご結婚(※2)を機に、漆器とのコレボレーションも始められましたよね」
小川「はい、せっかく繋がったご縁なので、何かできないかと。陶胎漆器というのは昔からある技法ですが、漆の特性上どうしても釉薬の質感を消してしまいます。でもやるからにはマチエール(素材)を生かしたい。漆器自体は使い込んでいくと、木地が透けてくる性質があります。それを陶板でもできないかと研究して作品を完成させました。50年ほどしたら陶板の質感が出てくるはずです」
川口「他にもコラボしてみたい分野はありますか?」
小川「現代アートやデジタルやサイエンスでしょうか。また、現代は作家自ら言語化するスキルは必要だと感じるので、美学や哲学など美や価値を言葉に紡ぐプロの方とも共演してみたいですし、土をテーマに自然と共生する農や森、食の方とのコラボレーションも考えてみたいですね。もともとは伝統文化も、生まれた当時は前衛的でエッジの効いたものと思われていたはず。その時代にあった様々なものがぶつかり合い交わることで、新しい価値観が形成されたものが文化であるなら、現代でも分野を越えたコラボレーションが実現していくのは自然なことなのかもしれません。特にこの多様性の時代、新しいことに挑戦しやすい環境になったとも思います」
川口「早く次の企画を拝見したいです!ふだん馴染みのない方もコラボレーションイベントなら足を運びやすいですよね」
小川「そうですね。普段からカジュアルなお茶会や展覧会で、作品を手に取っていただく機会を作っているのですが、コラボするとより様々な人にリーチできていると実感します。そうそう、このコロナの自粛期間中にインスタグラムで『#Peace_thru_Tea』というハッシュタグの拡散を始めてみたんです」
川口「小川さんが起点だったのですか」
小川「はい、お茶とお菓子を楽しみましょう…というだけのバトンなのですが、これが予想以上の広がりを見せまして。SNSの偉大さを感じましたね」
川口「拡散力というのがインターネットの一つの強みですから。この先の展開などもお考えですか?」
小川「最初から考えていたわけではないのですが、これをきっかけにバトンに参加された方とお会いして何かご一緒できないかな?と考えています。SNSがリアルに人と人が繋がる糸口になればいいなと企んでいます」
川口「小川さんの中で育った企みがどんどん世に出ていくことが、とても楽しみです!」

※1 能「杜若」では在原業平は歌舞の菩薩の生まれ変わりとして描かれている
※2 奥様の生家は京都の老舗漆器店「象彦」

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