COTOPICS コトピックス
vol.42013年12月号
対談:観世流能楽師 橋本忠樹 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)
川口「なるほど。海外公演でも曲選びに特徴はあるんですか?」
橋本「ありますね。海外での能のイメージは綺麗な装束をまとって女面をつけ、ゆったり動くものと思われているのでアクロバティックなものは期待されていないんです。ある団体が海外公演のアンコールで『土蜘蛛』をやったら、大ブーイングが起こったと聞いたこともあるくらいです」
川口「そんなことがあったんですか(笑)」
橋本「はい、観客の反応も地域によって様々ですしね。チュニジアでの体験は衝撃的でした。舞台に誰かが登場するたびにヒュー!って歓声が上がって。ストーリーを字幕で流していたのですが、子供を亡くして墓の前で嘆く母親の前に子供の亡霊が現れるシーンでもWow!って、泣くとこなのに盛り上がってしまったり(笑)」
川口「活躍の幅が広いと本当にいろんな体験をされていますね!笹岡隆甫さんとの『生け花と能の会』など、他分野の方とのコラボレーションも、ご一緒される方やお客さんの温度感がまた違うのでしょうか」
橋本「そんなことはないですよ。なぜ今まで交わってこなかったのかと思うくらいです」
川口「交わりがなかったのに、橋本さん達の世代で実現できたのはどうしてですか?」
橋本「若いからというのがまず一つですね。それから今は昔と比べて周辺事情も変わってきましたので。コラボレーションはもちろん、Barで演能なんて昔は考えられませんでした」
川口「今も新しいことを考えられていると思うのですが、Barやコラボレーションは今後も続けていかれるのですか?」
橋本「そうですねぇ…若いからお客さんにも許されている面があると思うんです。今ももちろんやっていますが、ある程度の年齢になったら今度は正統派なものにももっと力を入れていかないと。例えばDOYOUKYOTO?(※6)のオープニングイベントなんかも、コラボイベントだったら見に来てくれるお客さんはいらっしゃいますが、そこから能楽堂に能を見に行こうと思ってくれる人はまだ少ない。同じコラボレーションでも、この能舞台できっちり成功させられなければダメだと思うんです。イベントで能に触れたお客さんが能楽堂にお越しいただける舞台をしたいと、今考えているところです」
はんなり時間が流れる京都
川口「世界を股にかけて飛び回っていらっしゃいますが、京都と他の場所の違いを感じられることはありますか?」
橋本「実は、同じ曲目でも東京のほうが演能時間が短いことがあります」
川口「へえ!面白い現象ですね。意識して変えておられるわけでもないんですよね?」
橋本「私たちも普通にやってますし。お客さんも普通だと思ってらっしゃるんですよ。でも差が生まれているということは、京都と東京で流れる時間が違うのかなと感じるんです。同じ24時間なのに京都のほうがゆっくり時間が流れている。不思議でしょう?」
川口「同じ間でやっていても、ちょっとずつ短くなっているのでしょうか」
橋本「そうですね。東京での演能経験がなかった高校生の頃、師匠が『東京の謡は早いし、稽古の時から気をつけなさい』おっしゃったことがありましたが、このことだったのかなと今では思います」
川口「じゃあ、皆さん共通して感じておられることなんですね」
橋本「はい。やっぱり東京は江戸っ子らしくちゃきちゃきしていて、京都ははんなりしているんでしょうか(笑)」
(※6)DOYOUKYOTO?ネットワーク…橋本氏も中心メンバーとして参画されている、京都の若手文化人が地球温暖化や環境破壊防止を呼びかける団体。ブリッジコーポレーションがwebサイトの運営と事務局を務める。
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