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COTOPICS コトピックス

vol.112017年4月号

きょうの架け橋

対談:箔画家 野口琢郎×当社代表取締役 川口聡太(3/3)

アーティストを世界へ導くインターネット

箔屋野口にて

川口「アートフェアへの出展情報など、こまめにブログでも発信してらっしゃいますよね」
野口「はい。これからのアーティストはどんどんインターネットやSNSを使っていくべきだと思っているので」
川口「それはまたどうして?」
野口「自分の作品を知ってもらうためには欠かせないツールですから。僕も以前はFacebookなどを使うのが怖くて敬遠していたのですが、2011年に父と初めての親子展をした時、友人に『絶対使った方が宣伝になる』とすすめられて、怖々始めたんです。すると、やはり集客力が違いました。Webに作品を公開することで、仕事につながったこともありますし。それからFacebookに制作工程を乗せているのですが、それを見て『作品に愛着がわく』と言ってもらえたこともあります」
川口「確かに、絵画の制作工程なんて我々はほとんど見られませんからね」
野口「ですよね。僕も見てもらえて嬉しいですし。何よりインターネット上でのツールがあると作品が人の目にふれていくスピードが全く違います。昔は画家は死んでから評価されるなんて言われていましたが、情報伝達速度が遅かったからではないかと僕は思うんです」
川口「なんと!なるほど!」
野口「SNSで瞬時に自分を世間へアピールできる現代の作家は、作風にもよるのでしょうがきちんと生きている間に評価されるようになっていくのではないでしょうか。だから後輩たちにも『SNSはどんどん使え』と教えています」
川口「インターネットが画家の世界にそんなに影響を与えるなんて…目からウロコです!いや、Web業界の人間としてすごく嬉しいです」

もがき続ける中の光に

川口「野口さんらの活躍で、西陣の技術にもまた注目が集まっているように思いますが、この先、着物や帯に関わることは考えていらっしゃらないのでしょうか」
野口「西陣に生まれた者として『いつか』という気持ちもあります。だけど今ではないなと」
川口「それは、どうして?」
野口「何年か前にお声がけいただいたこともあるんですよ。作家ものの帯を作らないかと。きっと西陣ではアーティスト業も『箔屋の息子が家業も継がんと遊んどる』と思われているだろうと思っていたので、嬉しくて一度は引き受けようと思ったんです。けれど自分の作品のイメージを帯にするには、単純に転写してもらうだけではだめで、きっとしばらくかかりきりになってしまう。やっと『美術作家』として見てもらえるようになってきたところなのに…。ですから、まだ今の自分ではやるべきじゃないと」
川口「西陣の活性化とアートはまた別ですもんね」
野口「そうですね。ただ、ずっと、先に進むためにもがいている西陣の職人さんの刺激になりたいとは思っていたんです。2016年に大阪で個展をした時、すごく熱心に見てくれる若い人が来てくれたことがあって。話してみると、西陣の箔屋の職人さんだったんですよね。『野口さん、有名人ですよ』って言われたんです。若手の集まりでよく名前が話題になるって。刺激をもらっているって。嬉しかったですね。願っていたことができていると分かって」
川口「それだけ力のある作品を作られている証明だと思います。これからの作品も楽しみにしています」

気さくであっという間に人の心を開いてしまうような笑顔の中から時折のぞく、強く純粋な美の世界への想い。箔が日ごと違う表情を見せるように、この先また新しいアートの景色へ、私たちを誘ってくれるに違いない。

取材・文 鈴木 茉耶
撮影(作品画像を除く) 河合 裕子

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