COTOPICS コトピックス
vol.1創刊号 2013年3月号
対談:未生流笹岡家元 笹岡隆甫 × 当社代表取締役 川口聡太(1/3)
- 未生流笹岡家元 笹岡隆甫
- 華道「未生流笹岡」家元。京都大学工学部建築学科卒業。3歳より祖父である二代家元笹岡勲甫の指導を受け、2011年三代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、伝統文化の新たな境地を開拓するなど、京都の若手文化人をリードする存在。
このコーナーでは、京都の伝統文化を担う方々へのインタビュー特集を毎号お届けいたします。文化と人々を繋ぐため、後世へ残していくために何を考え、感じ、活動されているのかをお伝えしていきます。
創刊号となる今回は、京都の伝統文化であるいけばなの未生流笹岡家元・笹岡隆甫氏と、当社代表・川口聡太の対談をお送りいたします。京都大学で共に建築を学んだのち、いけばなとITという異なる道へ進んだ二人。コトピックス本誌では、伝統文化とインターネットについてのお話をご紹介いたしました。
コトピックスWEBでは、大学時代のエピソードやいけばなへの想いなど、紙面で語りきれなかったお話を含めた拡大版にてお届けいたします。
春の訪れの感じさせる二月の晴れた日。未生流笹岡家元邸で、笹岡氏と川口の対談が行われた。
花×建築、Web×建築。見出した共通点
川口「大学時代は、ほんとに年がら年じゅう大学のあたりにいたね」
笹岡氏(以下、笹岡)「それも夜にね。授業中に作業しきれないから製図室に集まるんだけど、なぜか建築のみんなは昼は学校に来ずに、夜10時くらいに集まってきてね」
川口「昼間は何してたんだろうね?(笑)」
笹岡「わからない、ほんと何で夜に来るんだか(笑)それで、図面を書くのもそこそこにラーメン食べに行ったりして」
川口「お互い、建築の仕事には進まなかったけど、学生時代と今で通じるものってある?」
笹岡「建築を志した時はいけばなを意識していたわけではなかったんだけれど、幼い頃から身体で覚えてきたいけばなの美が、日本の建築にも見られる事を知ったのは貴重な経験だった。日本建築を研究していくと、寺院や城郭に左右非対称や高さの異なる三要素の調和といった、いけばなにも見られる意匠が見つかったりとか。ということは、花を美しく魅せるテクニック以上に、いけばなには日本人の美意識や思想が凝縮されているのではないか、と考えるようになった。いけばなを発信することは京都、そして日本を発信することになるという心構えを持てたのは建築があったからだと思う。外の世界からいけばなを見ることができたのは、大きかった。川口君は?」
川口「僕は建築とウェブサイトは非常に似ていると思ってて。ユーザーの利便性を追求して導線設計を行うところや、クライアント様の情報という素材を生かすというところとかね。素材を生かすという話は、笹岡君もこないだラジオでしていたよね。えーと、いけばなで人の手を加えるのは何割なんだっけ?」
笹岡「7対3。花が7割で、人は3割。華道家がどれだけ手を加えたとしても、結局は素材が大事だという教えだね」
川口「あ、そうそう。ユーザーが求める情報を、華美な装飾を施すのではなく、人々のニーズに合わせて見せ方をプロデュースするのが僕たちの仕事で。情報という素材を生かすってところがウェブにも通じるかなと」
笹岡「なるほどね。自然の一部を切り取るのがいけばなだから、編集するという意味では近いのかもしれないね」
インターネットは身近に文化を繋ぐツール
笹岡「今はDO YOU KYOTO?ネットワーク(※1)の活動にも積極的に関わってくれているけれど、川口君が伝統文化に興味を持ったきっかけって何だったの?」
川口「卒業後に笹岡君と再会したことだね。在学中はまさか同じクラスで机を並べていた人が将来家元になるとは思わなかったし。正直、伝統文化って別世界の人がやっているんだと小さい頃は思ってた。伝統文化に生きる人たちと知り合って初めて、敷居の高いものじゃなかったんだって分かって。友人が頑張っているのを見て、地元京都のために僕も何か手伝いたいと思った。インターネットで文化の担い手と世間を繋ぐことなら、今の自分にできるから」
笹岡「そうだね。インターネットでいけばなを習う人を増やすというより、伝統文化やいけばなをしている人を、身近に思えるきっかけになればいいなと思うよ」