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COTOPICS コトピックス

vol.112017年4月号

きょうの架け橋

対談:箔画家 野口琢郎 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)

美しさで癒す箔画

川口「作品を作る時に心がけられていることというのはありますか?」
野口「あまり無いんですよね。その時作りたいものを作っているというか」
川口「そうなんですか。現代アートにはテーマがあるものだと思っていました」
野口「現代アートは、問題提起をし、人に問いかける芸術だとされています。僕が通った美大でも、『この作品のコンセプトは?』と何度も聞かれました。でも僕は、強く世の中に問いたい事なんてあまりなくて、かといって思ってもいないコンセプトを出すのは嘘をつくようでしたくなくて、絵画表現からしばらく離れてしまった時期もありました」
川口「そうだったんですか」
野口「絵を描き始めたころから一貫しているのは、美しいものを作りたいという想いです。僕は沖縄が大好きでよく訪れるのですが、絵のモチーフの多くも沖縄の風景です。記憶の風景のかけらをコラージュするように制作している『Landscape』シリーズも、初めのきっかけは飛行機から見た沖縄の島でした。海や空がモチーフのものは、沖縄で眺めた海とその時の感情をただただ込めています」
川口「刹那の感情や景色の美しさを切り取られているのですね」
野口「本物の沖縄の海や空には敵いませんが、美しいものを作ることに意味があると僕は思っているんです。生きづらさを感じる人も多い時代でしょう。ですが、美しいものを見て美しいと感じることは、人を癒す効果があるらしいとある時読んだ脳科学の本に書いてあったんです」
川口「脳科学ですか!興味深いですね」
野口「逆に、美しいものを美しいと感じる脳の機能が低下すると、こころが疲れていく原因になることもあるらしいですよ。僕の箔画で誰かを癒すことができるような、そんな作品を作りたいですね」

海・空シリーズ『I unleash』

絵で生きるために海の向こうへ

川口「つい先日までもシンガポールのアートフェアに参加されていましたが、海外へ目を向けられたのは何かきっかけが?」
野口「きっかけはお世話になっているギャラリーさんに声をかけてもらったからですが、絵で生きていくためにはどんどん海外へ行く必要がある、と思います。日本ではまだ、日常的に絵を買う習慣があまり根付いていないところがありますから」
川口「確かに。そうですね」
野口「でも一歩外に出れば、世界には市場が広がっています。海外のギャラリーも海外のアートフェアには足を運ぶので、見てもらえる機会が増えます」
川口「アーティスト側にとっても刺激的な場所なんですね」
野口「はい。だから僕は展示中ずっとその場にいて、できるだけ自分で作品の説明をするようにしています。通訳の方を介してではありますが、やはりリアクションをこの目で見て、次の作品に生かしていきたいので」
川口「では、出展してみて変えたところもあるのですか」
野口「作品サイズですね。初めは小さなものを出したんですが、広い会場ではインパクトがないと立ち止まってももらえなくて、次から大きいものを出展するようにしました。でも大きいもののほうが作ってて楽しいので、気づけて良かったです。あとは作りたいものを作っていますね。展覧会に行くと世界の流行も分かるし、メジャーなものになるにつれ周りの出展作品も洗練されていて刺激をもらえます。でもあらゆるジャンルや傾向の違う作品が並んでいるので、逆に何をやってもいいんだと気が楽にもなりました」
川口「創作においてはより自由になれたんですね」
野口「はい。展示会は自然光のもとでは見てもらえないので、照明で反射しやすいように凹凸をつけたりという技術的な工夫もするようになりましたが」
川口「ああ、そうか!印象が全く変わりますよね」
野口「そうなんです。だから展示作業中からブースに入って、照明の角度や飾る位置もこまかくチェックしています」

斜めの角度から撮影。光の反射によって見え方が異なる。

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