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COTOPICS コトピックス

vol.72014年9月号

きょうの架け橋

2014年9月号【対談】山田松香木店 山田洋平×当社代表取締役 川口聡太(3/3)

時空を超えて香りを届けたい

山田松香木店 山田洋平 × 当社代表取締役 川口聡太

川口「若い世代にKiokaを使ってもらいたいとのことでしたが、他にはどんなアプローチをされているんですか?」
山田「体験教室などですね。特に将来のユーザーになっていただける可能性のある、若い方への文化啓蒙には力を入れています。今の時期ですと、夏休みの自由研究にも使ってもらえるように、小学生向けの体験教室。もう少し上の世代ですと、大学や高校に赴いて講義させていただくこともありますし、講義室に香室を併設したうちの施設にお越しいただくこともあります」
川口「今の若い世代への発信ツールとして、多くの企業がインターネットを取り入れていますが、この分野についてこれからの展望や夢はありますか?」
山田「そうですね、IT技術を使って遠隔地の人にも香りをお届けできるようになればいいなと思っています。香りって今ここにいないと体験できないものじゃないですか。それがいいところでもあるし、もどかしいところでもある。だけど、香り通信が開発されたらこちらから香りそのものを発信していけるようになるでしょう」
川口「面白いですね!ですが、香りの分子を作り出せないといけないですよね」
山田「そうなんです。先ほど、香木の成分はガスクロマトグラフィーでも分析しきれないと申し上げましたけど、その研究が進んで、レシピ通りに調合したら現地で似た香りを楽しむことができる、とか…光の三原色のような香りの要素が確立されたらできるんじゃないかって、そんな夢を描いています(笑)」

夕涼み/祇園祭

夏の商品「夕涼み」「祇園祭」

川口「なるほど。最近は歴史的遺産を記録するデジタルアーカイブなども注目を集めています。新たな香り体験の手法を発信していくのもそうですが、香りを次世代へ残していくことについてはどのようなお考えをお持ちですか?」
山田「そうですね。香りの分子を完全に再現できない以上、現物の香木を保存していくことが現段階でできることですので、それも含めて香りの研究が進んでほしいと思っているんです。というのも、香木自体がもう資源として枯渇してきているんですよ。香木は東南アジアが産出国なのですが、下手をしたら、もう天然の香木はもう気軽に手に入らなくなる可能性もあります。実は数日前までベトナムに行っていたのですが、そこで植林活動をしているんです。今植えた木が香木になるまでに数十年、数百年という時間がかかりますから、私が生きているうちにいい香木はできないでしょう。けれど誰かがやらなければ始まらない。植林にしても、体験教室にしても、私より何代先の遠い将来に香の文化を残すためのものなんです」

江戸時代から受け継がれてきた古の文化の前では、自らの時代は次世代への通過点でしかない。やわらかな香りに包まれ笑みを絶やさない姿の中に、決して折れない芯が見えた。

取材・文 鈴木 茉耶
撮影 浜中 悠樹

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