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2014年3月号

きょうの架け橋~今と未来を生きる京文化~

2014年3月号【対談】漆工芸家 三木啓樂×当社代表取締役 川口聡太(3/3)

『遊び』から生まれるものづくり

切錆飾卓「海のあなたの」

切錆飾卓「海のあなたの」2009年

川口「そもそも、漆塗はいつからやり始めたんですか?」
三木「いつからっていうか、小さい頃から作業場が遊び場だったんです。そしたら祖父(二代目三木表悦)が『これ、やってみるか?』って漆を塗る前の下仕事を渡してきたのを、はじめは遊び半分にやっていました。例えば『石地塗』という、細かく割った砥石を、木肌に薄く漆を塗った上にモザイクのように貼り付ける作業。ただこれ、たった数センチ四方を貼るにも根気と時間がいるんですよ。小学生だった僕はすぐにもう嫌だ!って飽きてたんですけど、また次の日にやってみたら、明らかに貼った場所によって受ける印象が違うんです」
川口「上手になっている、ですか」
三木「それもあります。でも集中力とか、気分とか、その時のテンションとかによって石の『間』が変わり、仕上がりの印象が変わるんです。同じ調子を保って、基本的なようで結構難しいんですよね。作業のタイミングによって出来上がる作品が変わってくるのは今でも変わりません。だから今でもオンとオフの切り替えはうまくとるようにしています。疲れてきたら漫画読んだり(笑)」
川口「そうなんですか、意外です(笑)どんなものを読まれるんですか?」

漆工芸家 三木啓樂 × 当社代表取締役 川口聡太

三木「僕はそのとき流行ってるタイトルに手を出すことが多いですね。マンガに限らず、本も読むし、テレビでバラエティ見たりもするし、粘土をいじったりもするし。世の中にアンテナを立ておいて、その時引っかかったものを作る。そういう『遊び』が僕らの仕事には必要なんです。一見、全く必要ないものの中に必要なものがある。だって僕らみたいな特殊世界に生きている人間が、実際にお椀を使う伝統工芸品に高い価値を認めていない人にアプローチしようと思ったら、どんなものも貴重です。自分のものさしが人とは違うだろうという認識はありますし、その違いを埋めるためには多くの人が良いと思うことを作り手として知らないといけません」
川口「なるほど…。では、そのアンテナに引っかかったものから例えば今までの常識を打ち破ったものも生まれたり?」
三木「いやー…確かに、試行錯誤する中で漆と感じさせないものを作ろうと思ったこともあるんですよ。でも、今の僕は昔からあるものをつくることも十分おもしろいですし、無理に打ち破ろうとは気負わないようになってますね。考えてみたら当然なんです、今生きている社会は今までの蓄積でできているんですから。この中で、10年、20年先もいいと思える、永く大事にされるものを作っていけたらいいですね」

この日二人が対談していた机も三木氏がつくられたもの。波面模様に艶めく漆黒と、きらきら輝く夜光貝が、海の底のようにも、星空のようにも見えて心が踊った。

取材・文 鈴木 茉耶
撮影 浜中 悠樹

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