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  3. 2014年3月号【対談】漆工芸家 三木啓樂×当社代表取締役 川口聡太(1/3)

2014年3月号

きょうの架け橋~今と未来を生きる京文化~

対談:漆工芸家 三木啓樂 × 当社代表取締役 川口聡太(2/3)

職人の魅力で付加価値を上げていく

切錆飾卓「やがて来て波が消し去る」

切錆飾卓「やがて来て波が消し去る」2008年

川口「個人的には、三木さんの作品ってとても尖っているというか、そんな印象を受けるんです。でもお人柄はとても気さくで、本当にいつお会いしても変わらないですよね」
三木「いや、いっつも言われるんですよ。テレビの取材とかでお話しているのを親戚とかが見ては『あんた、ここでご飯食べてる時と変わらへんなぁ』って。一応、今も取材用なんですけど(笑)」
川口「いや、いいじゃないですか!この人からあの作品が生まれるのかと思うと、さっきの職人さんからの発信というお話含め、作る人の魅力を知ってもらうことも大切だなと本当に思います」
三木「人と結びついたらものの価値ってくっと上がりますからね。例えば女性にとって、同じ指輪でも自分でいいなと思って買ったものか、好きな人から記念日にプレゼントされたものかで意味が全然変わるでしょう。それと同じだと思うんです。ある人から僕ら職人は、『モノで勝負しろ』って言われていたんです。いいモノをつくっていたら必ず認められるんだって。それが職人の考え方だとされていました。それは間違いない、だけどそれだけじゃないんです。昔から結局、職人気質の姿勢がかっこいいと思う人はその職人の作品を買うんです。モノ自体だけを見て、いい仕事だと言って買われるのは半分もない。良くも悪くもそれは現実です。その時の自分にとって価値があるかどうかが重要であり、人はその価値観に基づいてモノを手に入れようとするんです。極端な話、僕らの作る伝統産業のモノって実生活にはもういらないモノも多いですよ。生命を維持するだけなら必要ないです。でも人が生きるってそういうことじゃないんだと思うんです。モノにも人生にも、そこに付加価値があるから欲しいと思ってもらえる。父の作品で言うと、技術だけならもっと上手な人はたくさんいます。でも、出来上がった作品には何か、父の味があるんです。それが良いと感じて皆さん買って下さるんですよ」
川口「作り手の個性を出す作品作りが大切だと?」
三木「そうですね、ただ、いろいろ考えたこともあるんですが、今は個性は出そうと思わなくても勝手に出てくるものだと思っています。僕の特徴は、今はこの表面につける波模様と言われています。作るものに自分を写すことで、使う人にとっての付加価値を高めていくことが、これからの職人には求められているんじゃないかなと思います」

目線を吸収した研究所時代

漆工芸家 三木啓樂 × 当社代表取締役 川口聡太

川口「大学を出られてから、香川の研究所(※2)に行かれていますよね。なぜわざわざ?」
三木「誰かに漆を習いたかったんです。京都は道を歩けば人間国宝クラスの先生がゴロゴロいらっしゃるようなところなので、弟子入りするって選択肢もあったんですけど。でも、高名な先生であればあるほど、弟子は良くも悪くも影響を受けてしまうんじゃないかと思ったんです。その先生らしさを受け継ぐか、全く違うものを作ろうとするかっていうね。それはそれで大事なのですが、僕には合わない気がしたんです。それで思い切って京都を出ました。研究所には本当に多くの方が教えに来てくれていて、技術的にも勉強になりましたが、その中で僕はとにかくその人たちとできるだけたくさん話そうと考えるようになりました。ものづくりのやり方ではなく、その人が見ているものや考えていることを吸収しようと。例えば、仲良くなって『じゃあおいしいうどん屋さんがあったから、連れて行ってやるよ』と言われてご一緒する道中に、ふと車の窓の外を見て『あ、こんなとこに菜の花が咲いてる』とつぶやく。僕はそれを横で見ていて、その人の着眼点を知る。それがのちのち自分の肥やしになると感じたんです。先生方と話す時間をつくるために、課題や作業は午前中で終わらせましたね。あの時が一番一生懸命作ってた時かもしれない(笑)」

川口「いやぁ、短時間で作業ができるのは、三木さんに既にキャリアがあったからこそですよね。先生とのお話で、印象に残っている事って他にありますか?」
三木「雑談が多かったので、はっきり内容を覚えているのが少ないんですが…(笑)そうですね、『天才はいない』、『漆の正体を知りなさい』と言われたことでしょうか。『天才はいない』というのは、とにかく努力が職人を育てるという話でした。人間ですから、どんなに素晴らしい職人でも手の速さには限界があって、上手い下手は才能じゃなくて努力で決まるんだっていうこと。天才と言われるには必ずそれを支える何かがあるんです。『漆の正体を知りなさい』は、漆塗りはまず下塗りをして、これくらい乾燥させたらこんな風になって…っていう手順だけではなく、漆自体のことですね。漆の木からとれて、例えばなめてみたら季節によって味が違うとか。他人から教えてもらったことを鵜呑みにするのではなく自分で納得するということを積み重ねて、漆のことをいろいろな角度から知る。そういった根本的なことを知っていれば、行きづまった時や上手くいかなかった時、原点に帰ってやり直すことができるからと」

(※2)香川県漆芸研究所

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